自殺について

自殺とは
自分で自身の命を断つことである。呼び方としては自害、自死、自決、自尽、自裁などの言い方が有ります。WHOの推定によれば、毎年世界で100万人位が自殺していると言われています。各国での自殺者は死因の10位以内に入っており、特に15〜35歳の年代では3位以内になっていると言われています。自殺は一般にどうとらえられるか、時代・地域・宗教・生活習慣などによって異なりますがキリスト教圏では伝統的に自殺は罪と見なされてきました。
自殺が、1人出る事で家族や社会に対して心理的影響・社会的影響は計り知れないものがあり、自殺者一人に対し少なくとも平均6人が影響を受け、学校や職場で自殺が起きた場合は少なくとも数百人の人々に影響を及ぼすと言われている。
自殺者が出た場合、まず家族・知人がうつ病や不安障害、ASD(急性ストレス障害)、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などの障害などの症状を生じる可能性がある。場合のによっては「深刻な心理的苦痛に圧倒される」「残された人が自殺の危険を伴う事態に追い込まれることもある」
自殺される方がどのような人であれ、生きてや時に家族・知人・社会に、様々の貢献やつながりが間違いなく有ったといえると思います。
WHOでは自殺は様々な要因が複雑に関与して生じるが、そのほとんどが防ぐことのできる社会的な問題が原因であるとし適切な防止策を各国がうつことで防止できると断言している。

(欧米の解釈)
欧米では自殺の言葉自体の歴史は比較的浅く1651年、ウォーター・チャールトン氏の「自殺によって逃れることのできない災難から自己を救うことは罪ではない」という文が初めて表出されたものと言われる。この用語の語源は「sui(自分自身を)」+、「caedere(殺す)」という表現であり17世紀からの使用が定説とされている。それ以前には自己を殺すとか、死を手にする、自分自身を自由にする、などの表現があったが、一言でまとまってはいない。米国自殺学会のエドウィン・S・シュナイド氏は「魂と来世という思想を捨て去ることができたとき、その時初めて、人間にとって"自殺"が可能になった」と述べて、観念の変化が反映していると指摘した。来世や魂の不死を信じたとき、死は単なる終わりではなく別の形で「生き続ける」という存在の形態を移したものに過ぎなくなる。そこには死生観の変化があると思われる。
このように自殺の問題は「死」をどう捉えるかということとそれぞれの国の文化や時代によってさまざまな様相を呈するのである。


仏教での「自殺」
仏教では自殺を「じせつ」と読むが、死は永遠ではなく輪廻・転生により生は再現するという死生観を説いた。殺生は十悪の一つとされ、波羅夷罪(はらいざい)を犯すものであるとして、五戒の1つであるため、自殺もそれに抵触するとして禁じられている。真言宗豊山派の寺院石手寺は「自殺者が成仏しないという考えは仏教にはない」という見解を示している。病気などで死期が近い人が、病に苦しみ自らの存在が他者に大きな迷惑をかけると自覚して、自発的に断食などにより死へ向う行為は自殺ではないとされる
また仏や菩薩などが他者のために自らの身体を捨てる行為は捨身(しゃしん)といい、これは最高の布施であった。また、焼身往生や補陀落渡海、密教系仏教の入定(即身仏)や行人塚のように人々の幸福のために自ら命を絶った例が数多くあった。


「群発自殺、集団自殺、連鎖自殺について」
複数人の自殺が、近接した時間・場所において実行される群発自殺があり、これはメディア報道がきっかけとなって起こることが多い。群発自殺には、複数の自殺志願者が、お互いに合意の上で同時に自殺する集団自殺がある。インターネット上の自殺サイトを媒介として実行されたことがあった。戦争での集団自決とは異なる。
有名人の自殺の後追い自殺などを連鎖自殺、模倣自殺という。一般人の特殊な自殺を報じるニュースが、模倣者を続発させる現象のことも含めてウェルテル効果という。オーストリアなどでは報道の仕方を変える事で群発自殺を減らす事ができることを実証している。
その他の類型として、相手の同意がなく他人を自殺行為に巻き込む拡大自殺や自身で直接自殺するのではなく、わざわざ犯罪を犯して死刑になる事で司法の手を借りて自殺しようとする間接自殺などがある。警官を挑発して事件現場で殺害されよ

 

(宗教的な自殺について)
自殺は社会的な制度として行われた時代があった。宗教的な理由から生け贄として自害するなどである。またカルト宗教において、ある種の死によって魂が救われる、と教祖的立場の人間が説く場合に発生することがあるカルトの集団自殺や自主的な自爆テロまたはb強制的な自爆テロなどの事例もあり、こうした死が殉教と表現する集団もいまだに存在する。


(安楽死・尊厳死について)
がんや病気などで多大な苦痛を伴い死が目前と差し迫っている患者に限り、アメリカ、オランダ、スイスなどの国々では薬物投与などによる苦痛を伴わずに死を選択することができる安楽死が法律で認められている。
尊厳死は無用な延命治療を拒み、患者の尊厳が損なわれるのを避けるという理念であり、1994年に日本学術会議は、尊厳死容認のために、下記の条件を現した。

  • 医学的にみて、患者が回復不能の状態に陥っている場合。
  • 意思能力のある状態で、患者が尊厳死の希望を明らかにし、その患者の意思を確認できない場合、
  • 近親者など信頼しうる人の証言に基づくことが出来た場合。
  • 但し延命医療中止は、担当医が行うこととした。

米国では病院内での重大な医療事故の最も多いものは自殺であるといわれている。
日本での日本医療機能評価機構による調査で調査の3年間に29%の一般病院で自殺が起こっている。
その自殺者の入院理由となる疾患は、35%が悪性腫瘍(ガン)である。


(自傷行為について)
自傷行為はしばしば自殺未遂とされることが多いが、実際には自殺目的ではなく切ること自体の感覚を目的とする場合が少なからずある。しかし、自傷者の多くには実際に自殺願望があるうえ、自傷による事故死と自殺は非常に見分けづらいので、現実には自傷による事故死も自殺に含めてしまうことが多い。
自傷段階の場合、現世への希望をまだ諦めきっていないため、なんらか事態の改善につながる助けを求めている傾向があるとされるが、自殺ではコミュニケーションを求める行為はほとんど見られず、またそのような心の余裕もないことが多い。

(自傷行為者の特徴・動機)

  1. どうにもならない感情や緊張、怒り、空虚感、生気のなさから脱出したい。
  2. 身体的にはあまり強くなく、致死率はあまり高くない方法を好む。
  3. 不快感、居心地の悪さが間欠的に襲ってくる。
  4. もともと自殺するつもりは強くないので希死願望はそれほど強くはない。
  5. その場で他の選択肢を考えることもできる。
  6. 一時的な解決を図ろうとして行ってしまうことが多い。
  7. 前向きに考えられる瞬間と、自分をコントロールする感覚を少しは保っている
  8. 間違った考え方も感情も行為そのものによっておさまる。
  9. 「意識の変化」を期待する
  10. 社会の中での自らの存在感が築けていないと思っている。

(自殺行為者の特徴と動機)

  1. 痛みから逃れること。意識を永久に終わらせること。
  2. 致死率が非常に高い方法を好む。
  3. 耐えられない感情が永続的に続く。
  4. 決意が並外れて強い。自殺することが唯一の救いとしか思えない。
  5. 視野が狭い場合が多い。
  6. 絶望、無力感が中心で、一瞬であってもその感情を外すことができない。
  7. 自殺がうまくいかなかった場合、さらに救いがもてなくなる。
  8. うつや逃れられない、耐えられない痛みに対する激しい怒りがある。

(自殺者の統計数値)

世界保健機関によると、世界では30秒に1回程度の自殺が起こっており、一日3000人ほどが自殺で死んでいる。国立精神・神経医療研究センターによれば、自殺によって毎年全世界で約100万人が死亡しており、世界疾病負担の1.4%を占める。そして、自殺によって損なわれる経済的損失も数十億ドル規模にのぼる。 自殺の統計は、疾病及び関連保健問題の国際統計分類に基づいているので国際比較が可能である。WHOの『暴力と健康に関する世界報告』では、2000年における世界全体の暴力死が、自殺が815,000、他殺が520,000、戦争関連死が310,000と見積もられ「これら160万の暴力関連死の1/2近くが自殺、ほぼ1/3が他殺で約1/5が戦争関連である」と述べられている。この結果を、世界全体の暴力死では戦争によるものよりも自殺によるものが多い、と述べた資料もある。

(自殺者の男女比)

失業時や離婚時に男性の方に負荷が集中しやすいことを指摘、失業や離婚をした場合、女性であれば家族や社会の状況に組み込まれて保護されるのに対し、男性は社会的に孤立を余儀なくされることを挙げている。日本でも自殺者の70%以上が男性である。男女比が特に極端な旧共産圏諸国を除けば、日本における自殺の男女比は平均的なものである。遺書などから自殺原因を調べた場合、20代から60代では「勤務問題」・「経済・生活問題」を挙げる者の数が男女で10倍近くの開きがある。配偶者と離別したもの同士の自殺率の男女比や失業者同士の自殺率の男女比の場合はそれぞれ6.04倍(2000年)、11.4倍(2009年)に跳ね上がる。

(自殺の原因)

日本の自殺者305名の遺族を対象にした調査を元にした危険複合度の分析によれば、主な根本要因として「事業不振」、「職場環境の変化」、「過労」があり、それが「身体疾患」、「職場の人間関係」、「失業」、「負債」といった問題を引き起こし、そこから「家族の不和」、「生活苦」、「うつ病」を引き起こして自殺に至る。 つまり統計的に見ると、自殺の根本要因には社会的な要因があることが多い。しかし、失業率が高い国は世界には多くあるが、例えばスペインの失業率は20%を超えているが自殺が社会問題とはなっていない。これは所得格差が自殺率と相関が少ないことを意味する。

(自殺者の死亡前の多数を占めた診断症名)

  • 気分障害
  • 薬物乱用
  • 統合失調症
  • パーソナリティ障害
  • 気質性精神障害
  • 不安障害
  • 適応障害

(うつ症と自殺について)

WHOの自殺予防マニュアルによれば、自殺既遂者の90%が精神疾患を持ち、また60%がその際に抑うつ状態であったと推定している。該当しなかったのは、診断なし2.0%と適応障害2.3%に過ぎないとしている。物質関連障害(アルコール依存症や麻薬)の比率については日本の状況と大きくことなる。WHOは自殺と密接に関連しているうつ病など、3種の精神障害を早期に治療に結びつけることによって、自殺予防の余地は十分に残されていると強調している。WHOの2008年の発表では、毎年100万人近くの自殺者のうち、うつ病患者が半数を占めると推定している。日本においては、高度救命救急センター搬送の自殺未遂者の80%以上について、DSM-4基準に基づく精神疾患が認められ。また自殺既遂者305名の遺族調査によれば39%がうつ→自殺という経過をたどっていた。ただしうつ病は自殺の根本要因ではなく、同調査は他の根本要因がうつを引き起こしていることを明らかにしている。


(自殺に関するマスメディアの報道ガイドライン)

  • 写真や遺書を公開しない
  • 具体的で詳細な自殺手段を報告しない
  • 単純化した理由付けをしない
  • 自殺を美化したり、扇情的に扱わない
  • 宗教的な固定観念や文化的固定観点を用いない
  • 悪人探しをしない

(マスメディアの報道による悪影響と良い影響の事例)

  • 1986年(昭和61年)4月8日にアイドル歌手の岡田有希子が18歳で自殺すると30余名の青少年が自殺し、「そのほとんどが、岡田と同様に高所から飛び降りて自殺した」「この影響はほぼ1年続き、1986年はその前後の年に比べて、青少年の自殺が3割増加」した。
  • またX JapanのHideが自殺した(後に事故死の説も浮上する)月はその周辺の月に比べ、2倍程度自殺率が高い。
  • 別個の問題として、2000年頃の日本での練炭騒動や2007年前後の日本での硫化水素騒動のように、報道番組が新たな自殺方法をセンセーショナルに取り上げることで、その自殺方法が喧伝されてしまう場合もある。
  • 報道方法を変えることにより、自殺数を減らすことに成功した例として、1984年から1987年にかけてオーストリアのウィーンでジャーナリストが報道方法を変えたことで、地下鉄での自殺や類似の自殺が80%以上減少し、自殺率を減らす効果があったといわれる。

(国別の自殺に関する実態)

アメリカ合衆国
銃の所持が広く認められている国では、年齢を問わず銃による自殺が多い。アメリカ合衆国における調査結果では、10代の小火器(拳銃など)による自殺が全体の49%と、ほぼ半数を占めている。銃による自殺が多い理由にはその致死率の高さと手軽さが挙げられる。アメリカでは、一部の州で、自殺幇助が合法化されている。このため、終末期ではない病人や、精神障害者が自殺を望む場合、医師は治療する方向ではなく致死薬を処方する場合があるとされる。抗がん剤治療の公的保険給付は認められないが、自殺幇助なら給付を認める事例もあるとされる。 アメリカでは、退役した軍人が毎日18人前後、自殺している。特に、イラクやアフガニスタンなど戦地に赴いた経験のある元兵士の自殺率は高く、男性の元兵士の自殺率は、アメリカ成人男性の率の2倍、女性の場合は平均の3倍となっている。平均のアメリカには、伝統的に軍での厳しい訓練が自殺を抑制するとの考えがある。しかし、退役軍人省の研究によれば「軍事訓練にはもはや十分な自殺防止効果がないのかもしれない。ただしそれを裏付けるデータはない」としている。アメリカ軍では、2005年以来、自殺率が増加している。戦闘経験や戦場への派兵が原因ともされているが、2001年から08年の間に自殺した83人の質問票データを分析した結果では、自殺リスクの増加と、戦闘経験や戦場への派兵回数・累積日数には関連性は無いとされる。

イギリス
17〜18世紀のイギリスは自殺大国として知られ、自殺はイギリス病とも呼ばれた。イギリスではかつて自殺は犯罪とされ、自殺未遂者は処罰され投獄されていたが、1961年の「自殺法」の成立によって自殺は犯罪ではなくなった。

中華人民共和国
中華人民共和国(人口13億人)における自殺者数は、2003年は年間約25万人強、2005年は約29万人(うち女性は約15万人)となっている。特に、15 - 34歳の若年層を中心とした年代では、自殺は死因のトップとなっている。都市と比べ貧しい農村部では自殺率が3倍ほど高くなる、男女別では、女性の方が若干多く、日本を含む他のほとんどの国では男性の自殺者の方が多いのと対照的である。自殺の要因については、ドメスティックバイオレンス(女性)、夫の不倫(女性)、「生活や就職」などが挙げられる。また、チベット問題に揺れるチベット自治区では、漢族によるチベット人への弾圧や虐殺に抗議するため、焼身自殺を行うチベット人が後を絶たない。また、中国広東省広州市は、2008年6月に多発する自殺ショーと呼ばれるパフォーマンスの取り締まり強化を行った。自殺ショーとは、自殺すると見せかけ高層ビルの屋上などで「自殺する」と騒ぎ立て、未払い賃金支払いなどを訴え、見返りとして未払い金の支払いを要求をするというもの。自殺ショーが行われるたびに、警察車両や救急車両が出動し、交通渋滞などの原因にもなっていた。そこで広東省広東市は自殺ショーを迷惑行為と位置づけ、ショーを数回にわたり実施した者に対する罰則を規定した。

カナダ
カナダは、国家規模での自殺防止政策が存在しない数少ない国の一つである。特に先住民のイヌイットなどの自殺率は非常に高い。イヌイットの自殺率は、2001年の保健省調査によると、10万人あたり135人で、カナダ全体の10万人あたり12人の11倍を超えた。また、イヌイットの自殺で目立つのは若者の自殺であり、自殺者の83%は30歳未満である。

大韓民国
韓国でも他のほとんどの国と同様、男性のほうが女性よりも2.5倍程度自殺しやすいものの、男女比は日本よりも若干低く、20代では男性より女性の方が自殺者数が多いとの報告がある。日本と同様に近年自殺者数が急増しており、ここ数年は日本よりもはるかに高率となっている。なお、2009年以降はOECD諸国最高値となっている。韓国の場合、高齢者に自殺が偏っており、60歳以上の自殺率は、2009年は10万人あたり68.25人、2010年は69.27人と極めて高く、その背景には高齢者の生活不安が解消されていないことにあると考えられている。東亜日報が、韓国の小学校4、5、6年生に調査したところ、2割が「自殺したいと思ったことがある」と回答するなど、韓国人は幼少時から激しい不安感を感じているとされる。

スイス
スイスは自殺が多い国として知られていたが、近年は減少傾向にあり、1991年から2011年までの間に、スイスの自殺率は10万人に20.7人から11.2人まで減少している。かつてはタブー視されていた精神病の存在が徐々に認められ、患者が助けを求めやすくなったことが背景にあるという。スイスでは、人生のある時点で自殺を企てる人は10人に1人。また、5割の人が死ぬことを考えたことがあるとされる。また、スイスでは、自殺幇助が認められており、幇助者に直接の利益がない場合は自殺幇助は犯罪とされない。スイスの自殺の5件に1件は、幇助者の協力によるものとされる。自殺幇助が合法となっているため、例えば末期患者が自殺を望めば、病院の医師は自殺のために協力する。このため、スイスを訪れる末期患者の外国人が年々増加しており、社会問題となっている。自殺幇助はスイスで圧倒的な支持を得ており、国民投票でその是非が問われた時でも、自殺幇助禁止には85%、自殺旅行禁止には78%が反対票を投じ、いずれも否決された。スイスには、自殺幇助を専門に扱う非営利の団体が存在している。外国人も積極的に受け入れるディグニタスや、スイス永住者に限定するエグジットなどが存在する。近年、彼らを利用する顧客は増加傾向にある。スイスは銃社会であり、自殺にも銃を用いる傾向にある。その割合はヨーロッパ最高であり、自殺者の24%から28%が銃で自殺している。また、特に男性が銃による自殺を選択する傾向があり、銃による自殺者の95%は男性となっている。スイスでは、国による自殺を予防するプログラムは存在しないが、州による自殺予防プログラムがある。現代と事情は異なるが、エミール・デュルケームによる1897年の著作「自殺論」では、スイスの州別自殺率について触れられており、カトリック系ドイツ人の州の自殺率は87/100万、カトリック系フランス人の州の自殺率は83/100万、プロテスタント系ドイツ人の州の自殺率は293/100万、プロテスタント系フランス人の州の自殺率は456/100万と、地域別に見て大きな開きがあった。

フランス
フランスはヨーロッパで最も自殺率の高い国の一つであり、G8中でも、ロシアや日本に次いで自殺率が高い国である。自殺の方法として最も多いのは首吊りであり、猟銃での自殺や、飛び降り自殺、列車に飛び込むといった手法も使われる。2009年以降、経済悪化を背景に、フランスの自殺者は増加傾向にある。仕事のストレスによる自殺もある。フランスでは2000年から一週間に35時間以上の労働を基本的に禁じる週35時間労働制が施行されている。そのため、一般の労働者に過労死などは基本的に起こりえないとされる。しかし、こうして減らされた労働時間を取り戻すために、企業は労働者に更なる結果を求める傾向にあるため、労働者にはストレスが掛かり、多くの暴力事件や自殺者を生み出しているとの指摘がある。フランステレコムでは、2008年2月から2009年9月の約1年半の間に、23人もの自殺が発生し、社会問題となった。職場で自殺をしたり、仕事が原因で自殺するとの遺書を遺したケースもある。この一連の自殺では、1週間の間に5人が立て続けに自殺したこともある。

ロシア
ロシアは、世界で最も自殺率の高い国である。1990年には、10万人あたり26.5人だった自殺者は、1995年には41.5人に急増している。ロシアの自殺者の増大は、男性の平均寿命を押し下げている要因の一つとなっている。本来であれば、医療技術の進歩や栄養・公衆衛生の改善によって上昇していくはずの平均寿命だが、ロシアでは経済が発展しているにもかかわらず、1965 - 1966年平均の69.5歳をピークに寿命の低下が進行しており、1990年に69.2歳、2000年に65.36歳、そして2002年には64.8歳となった。この平均寿命の低下と、少子高齢化の進行により、ロシアは急激に人口が減少している。ただ、近年は自殺率が低下傾向にあり、2012年の統計では、人口10万人あたり、自殺者は20人ほどとなっている。

日本
日本における自殺者数は世界各国と比べ未だに大きい値であり、10万人あたりの自殺率はOECD平均の12.4人と比べ、日本は20.9人であった。OECDは「日本の精神医療制度はOECD諸国の中で、精神病床の多さと自殺率の高さなど悪い意味で突出している」と報告している。特に日本の男性中高年層自殺率は世界でもトップレベルである。2011年(平成23年)までは年間自殺者数が3万人を超えていたが、近年は減少してきており2012年には15年ぶりに3万人を下回った。2012年の総自殺者数は27858人である)。これは同年の交通事故者数(4411人)の約6.32倍に上る。しかし、20代-40代の若年者における自殺率は依然高いままである。日本では、2009年現在、15分毎に一人が自殺してるとされている。OECDは、日本はうつ病関連自殺により25.4億ドルの経済的損失をまねいていると推定している。2014年の自殺者は2万5374人であり、2013年より7%減り、2009年より5年連続で減少している。

(自殺の歴史)

自殺の歴史は古く、紀元前の壁画などにもその絵や記述が残されている。古代ギリシャの詩人サッポーは入水により自殺したという説がある。重大な犯罪を起こして死刑を免れない状況に陥った貴人が、公衆の前で処刑されるという屈辱を免じてその名誉を重んじさせる意味で、自殺を強要されることがあった。律令制国家における皇族や高位者が死刑判決を受けた場合に、自宅での自殺をもって代替にするのを許したことや、戦国時代から江戸時代初期にかけての日本における武士階級に対する切腹処分などがこれにあたる。賜死の形態を取ることも多く、洋の東西を問わず見られる現象であり、ルキウス・アンナエウス・セネカなどが知られる。

キリスト教
キリスト教においては基本的に、自殺は重大な罪だとされるが、キリスト教で自殺に対する否定的道徳評価が始まったのは、4世紀の聖アウグスティヌスの時代とされる。当時は殉教者が多数にのぼり、信者の死を止めるために何らかの手を打たねばならなくなっていた。また10人に1人死ぬ者を定めるという「デシメーション」と呼ばれる習慣のあったことをアウグスティヌスは問題にした。アウグスティヌスは『神の国』第1巻第16-28章において、自殺を肯定しない見解、自殺を罪と見なす見解を示した。神に身を捧げた女性が捕虜となって囚われの間に恥辱を被ったとしても、この恥辱を理由に自殺してはいけない、とした。またキリスト教徒には自殺の権利は認められていない、と述べた。「自らの命を奪う自殺者というのは、一人の人間を殺したことになる」とし、また旧約聖書のモーゼの十戒に「汝、殺すなかれ」と書かれている、と指摘し、自殺という行為は結局、神に背く罪だ、とした。アウグスティヌスは「真に気高い心はあらゆる苦しみに耐えるものである。苦しみからの逃避は弱さを認めること」「自殺者は極悪人として死ぬ。なぜなら自殺者は、誘惑の恐怖ばかりか、罪の赦しの可能性からも逃げてしまうからだ」と理由を述べた。693年には第十六回トレド会議(英語版)において自殺者を破門するという宣言がなされ、のちに聖トマス・アクィナスが自殺を生と死を司る神の権限を侵す罪であると述べるに至って、すでに広まっていた罪の観念はほぼ動かし難いものになり、自殺者の遺族が処罰されていた時代や、自殺者は教会の墓地に埋葬することも許されなかった時代もある。ダンテの叙事詩『神曲』においては、自殺は「自己に対する暴力」とされており、地獄篇の第13歌には醜悪な樹木と化した自殺者が怪鳥ハルピュイアに葉を啄ばまれ苦しむという記述がある。ドイツの哲学者ショーペンハウエルは『自殺について』のなかで、キリスト教の聖書の中に自殺を禁止している文言はなく、原理主義的に言えば、自殺を禁じているわけではないため、「不当に貶められた自殺者の名誉を回復するべきだ」とした。

日本
日本で最も古い自殺に関する伝承は、『古事記』のヤマトタケルの妃弟橘比売命(オトタチバナヒメノミコト)の伝承である。中世には、弘安7年(1284年)あるいは延慶2年(1309年)、文保元年(1317年)が没年とされる足利尊氏の祖父足利家時が八幡大菩薩に三代後の子孫に天下を取らせよと祈願した置文を残して自害したという伝説が残るが、自害した事実を含め定かではない。戦国期には天文22年(1553年)に織田信長の傳役平手政秀が死をもって信長の行動をいさめたとされる事例などもある。足利義輝など最後は戦闘の末、敵兵に討ち取られた人物が、義輝と付き合いのあった山科言継の日記「言継卿記」には、その最後が自殺となっているなど、改変されて記録されている者もいる。これも雑兵に討ち取られるよりは、自害の方が名誉ある死と考えられていたためである。これらは現在でも国語の教科書に掲載され、日本の武家文化の一つとして継承されている。

キリシタン
カトリック洗礼を受けていた細川ガラシャは、武士の妻としては自害すべきだったが、キリスト教徒としては自殺できず、家臣に胸を槍で突かせた。なお日本におけるキリシタンに対する迫害が強まった時代において、キリシタンに対して棄教するよう強烈な圧力がかけられていた際に、クリストファン・フェレイラのように幕府による拷問に耐えかねて棄教した者もいれば、最後の最後までキリスト教に対する信仰を放棄しないで殉教したキリシタンもいる。日本におけるカトリック教会は、ペトロ岐部など殉教したキリシタン187名を祝福し、2008年には長崎県営野球場において列福式が実施された。

江戸時代
鎌倉以来武士は江戸時代初期までは主君に死罪を自ら行う切腹を命じられても、従容として死につくのではなく、ある程度の抵抗を示した後に主君側に討ち取られる以外に選択肢がなくなってから自害することが「武士の意気地」とされた。ところが、江戸時代中期になると、従容として腹を切ることが「潔い」とされるようになる。これは家門の存続が個人の武名以上に重要な価値を持つようになったなってきたことが大きな要因となっているが、徳川の文治政治の進展と共に連座が緩和されたため、制裁が決まる前に単独で一命をもって責任を取れば、多くの場合において家門もしくは家族の存続は許されたからでもある。なお、女性の場合は切腹ではなく喉を短刀で突くのが武家における自害の作法とされた。
また、江戸時代には大坂や江戸を中心に心中が庶民の間に流行した。これは近松門左衛門の『曾根崎心中』を代表とする「心中もの」の芝居や浄瑠璃が評判を呼んだことによる影響と考えられている。この世を憂き世として忌避し、あの世で結ばれるとして男女が自殺に及んだ。これに対し、幕府は心中禁止令を出すとともに、心中死体や心中未遂者を3日間さらし者にした上で、未遂者は被差別階級に落とすという厳罰を実施している。

近代
近代においては明治天皇崩御のおりに殉死した乃木希典・静子夫妻が世論の称賛を浴びた。明治以降は日本の自殺率は1936年まで20人前後と緩やかな上昇傾向にあったが、戦争の影響で減少し戦前戦後を通じ最低レベルとなった。国家総動員法(1938年制定)下の時代情勢によるとされ、また詳細な統計を取っていられる状況ではなかったと考えられる。

戦後
その後、戦後の価値観の大きな転換や社会保障が整備されていなかったこともあり、高度成長が本格化するまでのあいだ(1950年代)日本の自殺率は1958年には10万人あたり25.7人と世界一となり、2008年現在に至るまで過去最高の数値を記録している。高度経済成長の時期は減少に転じた。1973年のオイルショックの頃から再び増加したが、1980年代後半からのバブル経済期には減少した。バブル崩壊後の1990年代後半にスウェーデン、ドイツより低かった自殺率は急激に上昇し、OECDはその原因についてアジア通貨危機を挙げている。